【必読】中国語入門虎の巻

学習方法

みなさんが中国語を始める理由はさまざまだと思います。

仕事や学校の授業で必要になった、趣味でやってみたい、中国人の友達と会話したい..etc

学習を始めるにあたってまず考えるのは、

  • 何からどうやって始めたらいいのか
  • 習得までどのくらいの時間がかかるのか
  • コツや効率の良い学習方法はないか

この3点だと思います。今回は、私の経験からこれらにお答えしていこうと思います。

何からどうやって始めたらいいのか

中国語の種類選び

中華圏の言語といっても、北京語、上海語、広東語、台湾などがあり、体系化されていない方言も含めると実にさまざまです。また簡体字と繁体字という文字表記の違いがあり、どれを選んでいいか悩む方もいるのではないでしょうか?

中国では一般に簡体字の‘普通話’が共通語とされ、教科書やテレビ字幕にも採用されており国民の7割以上が使用できます。台湾では繁体字の”国語”が共通語とされ、多少の語彙の違いはありますが基本的には‘普通話’と同じで十分にコミュニケーションをとることができます。

また日本の中国語検定やHSKなど各種試験では‘普通話’での出題、回答が原則です。

このことから、中国語選びはよほどの特殊事情がない限り”普通話”を選択してください。

最初の教材

普通話を学習すると決定したら、次は教材選びです。

なんだかドキドキしませんか?私はこの教材選びも語学学習の面白さの一つだと思っています。

ここでのポイントは<200~300ページで音声付の会話テキスト>を選ぶことです。

私は最初、文法中心のそれまでの英語教育に疑問を感じ、話せない日本人から脱却したいという思いから、会話中心のテキストを探し「中国語が面白いほど身につく本」という教材を購入しました。

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この本はシチュエーション別の対話形式になっており、音声を真似することで即実践できるフレーズが散りばめられています。また要所に基礎的な関連単語もまとめてあり、会話を通して必要な語彙力が自然と身につくよう構成されています。ただ文法的な解説は少なく「この表現が何でこの意味になるの?」という疑問も残ったため、後日次の文法教材を購入し必要に応じて確認していきました。


文字通り文法全般について詳細に解説してあるテキストです。

ただ文法だけでいえば中国語検定3級~2級に十分対応する内容ですので、最初はあくまで1冊の会話教材に集中し、よくわからない表現の理解を深める程度のサブとして活用してください。

習得までどのくらいの時間がかかるのか

結論から言えば皆さんの目指すゴールによって異なります。

基本的な日常会話を楽しむなら

旅行に出かけ、簡単な日常会話を楽しむことだけが目的なら、先にお話した<200~300ページで音声付の会話テキスト>だけを反復練習することで、カタコトであっても現地で話す楽しみを体感できると思います。

毎日30分から1時間の学習時間であっても数か月で一通りの学習を終えられますが、語彙の定着には反復学習が欠かせませんので2~3回やりこんでいく場合の必要時間は1年前後といったところでしょうか。

中国語検定3級・HSK4級合格を目指すなら

このレベルに達するには少なくとも常用単語1,000以上の語彙力を必要としますので、500語程度の日常会話テキストでは不十分です。また文法に関しても全般的な理解がないと太刀打ちできません。

知識ゼロから独学で始める場合、日常会話テキストと文法全般のテキストを理解したうえで、語彙強化用のテキストと問題集1冊は仕上げるくらいのボリュームですので、最低でも1年は必要です。ちなみに中国語検定協会の3級認定基準では学習時間200~300時間、一般大学の第二外国語における第二年履修程度”と説明があります。

私は中国語を始めた当初、平日は帰宅後あまりやる気が出ず、休日に一気にやろうなどと考えてあまり効率が上がりませんでした。覚えたつもりの単語やフレーズの大半を毎週忘れてしまっていたからです。半年後これではダメだと感じ、毎日短時間でもいいから繰り返し学習するよう意識し、結果的にギリギリの点数でしたが1年で運よく中国語検定3級に合格しました。

オススメ教材は各種試験のカテゴリーで紹介させていただきます。

ちなみに、あえてゴール設定で分類しませんでしたが中国語検定4級やHSK3級以下であれば、もう少し合格は簡単だと思います。しかしこれらの級を目指す理由は何でしょうか?旅行を楽しむのであれば試験を受ける必要はありませんし、海外留学や転勤、就職活動などのために中国語ができることをアピールするのであれば不足です。履歴書に書くには最低中国語検定3級かHSK4級以上でないとむしろ逆効果になるのではないでしょうか。これらの級の受験は目標ではなく、あくまで中国語検定3級・HSK4級を目指すためのステップアップ手段と考えましょう。

中国語検定2級・HSK5級合格を目指すなら

語彙力で表すなら5,000語以上必要でしょう。単純に学習時間で測るのはむつかしく、どれだけ集中して密度の濃い学習をしたかが大事になってきます。

後に説明しますが語学の習熟度とはすなわち、「読む」「書く」「聞く」「話す」というそれぞれの能力の向上であり、このバランスが非常に重要です。

たとえば「読む」「書く」の能力だけを5,000語以上に向上しても中国語検定2級では通用しません。3級までは出題語彙の幅も狭く、「読む」「書く」中心の学習+最低限の「聞く」で対応できるのですが、中国語検定2級以上に合格するには「聞く」に比重を置いた学習に切り替える必要があります。これは非常に大事なポイントですので肝に銘じておいてください。

私は運よく中国語検定3級に合格した後、意気揚々と次回の2級に挑戦しましたが「読む」「書く」「聞く」のすべてにおいて語彙力が圧倒的に不足し、4割くらいの得点しか取れないという苦い経験をしました。あまりにも高い壁にぶち当たったような気分で、どのくらい学習したら合格するのか全く分からない状態に陥り3ヶ月ほど学習から離れた時期もありました。その後“合格奪取中国語検定2級トレーニングブックリスニング編”で「聞く」能力を向上させる学習に切り替え、中国ドラマや映画を見ながら新出語彙をノートに書き留め時間があるときに見直すなど、「読む」「書く」「聞く」の全ての語彙力の向上を意識した結果、2年後にようやく合格することができました。


時間の目安としては「読む」「書く」5,000語、「聞く」3,000語以上の語彙力が必要だと感じますので、ゼロから独学するのであれば2年以上はかかると思います。ちなみに大学の中国語学科であれば卒業までにこの級の取得を目指すところも多いようです。

中国語検定準1級・HSK6級・通訳案内士合格を目指すなら

私の経験からゼロから独学して約5年かかりました。語彙力でいえば7,000語以上必要です。

語学の習熟度とは「読む」「書く」「聞く」「話す」の向上とお伝えしましたが、これまでの試験には「話す」がありませんでした。しかし、中国語検定準1級および1級、通訳案内士の試験では2次試験で面接があり、口述での運用能力を試されることとなります。

個人的な感覚としては「読む」「書く」7,000語、「聞く」5,000語、「話す」3,000語といったところでしょうか。さらにハードルは上がりますが、中国語検定2級を突破したなら自分なりの学習方法をすでに体得していることでしょう。私の場合は、平日2時間、週末4時間くらいの学習で2級合格後ちょうど1年で準1級に合格することができました。

ちなみにHSK6級は文章、リスニングの内容・ボリュームとも素晴らしく過去問集自体が実力アップのための非常に良いテキストとなります。ただ試験内容に「話す」がなく、文章問題も日本人にとっては感覚的に解ける傾向にあり、合格点(300点中180点以上)をとることは比較的容易かもしれません。

また通訳案内士試験は日本について説明する内容が大半ですので、観光・歴史・時事についての語彙力の強化が別途必要です。

コツや効率の良い学習方法はないか

これから説明することはあくまで真剣に学習する方への道しるべです。魔法のようなテクニックではありませんが、ある種の真理だと確信しています。これを理解していただくことで学習が思うようにはかどらない時にも迷わず軌道修正することができるでしょう。

何度も言いますが、語学の習得には「読む」「書く」「聞く」「話す」というそれぞれの語彙力を向上させる必要があります。

「読む」「書く」「聞く」「話す」それぞれの能力の特徴

この4つの能力には以下のような特徴があります。

「読む」「書く」・・・・インプットする(引き出しを作る)

「聞く」・・・・耳を慣らす

「話す」・・・・アウトプットする(作った引き出しを引き出す)

見ての通り、習得するための学習方法が全く別なのです。

私もそうでしたが、多くの人は同じ学習方法ですべての能力を向上させようと試みます。

最初にお話ししましたが私の場合、学生時代までの英語教育では話せるようにならないと思い「話す」ために基本会話集を聞きながら自分で発声してみるという学習方法をとりました。

はじめのうちは飽きることなく新鮮な気持ちで取り組めましたが、学習が進むにつれ限界を感じるようになってきました。慣れながらインプットし、アウトプットするという作業を同時におこなったため、語彙力が200~300語を超えたくらいから消化不良をおこし、実感として進捗スピードがとても遅くなったのです。

例えば外国語を学ぶとき留学したり現地で生活すれば半年くらいで自然と話せるようになると思っていませんか?

答えは“ノー”です。

仮に知識ゼロの状態で現地で生活するとしたら、最初の私のように慣れながらインプットとアウトプットを同時に行うことになり、半年くらいではせいぜい初歩的な日常会話程度しかおぼえることはできません。もちろんこの程度でも日本の友人からは感心されるかもしれませんが、語学ができるとは到底いえないレベルです。留学して現地生活で全く不自由ない程度の会話力を身につけた人は、少なくとも行く前に「読む」「書く」の語彙力をしっかりと備えていたはずです。または現地に行ってから寝る間も惜しんで「話す」訓練以上に「読む」「書く」の学習を必死におこなった人でしょう。留学の最大の目的は「話す=アウトプットする」訓練にありますから、アウトプットする引き出しがなければむしろ非常に効率の悪い方法となります。これは中国語に限らずすべての語学に共通しています。知識ゼロの状態で慣れながらインプットとアウトプットを同時におこなうというのは、脳が著しく成長していく幼少期は別としてたいていの大人にとっては非常に難しいことなのです。中国に留学する場合たいていの学校がHSK5級以上の取得を条件としているのはこのためです。

黄金の学習バランス

では学習を進めるうえで、どのように「読む」「書く」「聞く」「話す」の語彙力強化のバランスをとっていくのがベストでしょうか。

ポイントは文法を理解したうえで「聞く」に重点を置くことです。

この点を説明していきます。

「聞く」はこれまで触れたことのない中国語を聞き分ける能力で、4つの能力の中で習得に一番時間がかかります。一番大事なのは「話す」じゃないの?と思う方も多いと思いますが、考えてみてください。聞いてわからない単語は絶対に話せません

ただ「聞く」という能力は単なる暗記とは違い慣れることですので、難しいということではなく粘り強く時間をかければ必ず向上します。

文法が大事なのは、語学習得の究極は語彙力の向上にあるからです。

語彙力が大事なら辞書や単語集でひたすら覚えたらいいのでは?と思うかもしれませんが、効率がとても悪くまず不可能だと思います。私はこれまで単語集を語彙力の確認のために購入したことはありますが、単語集だけで語彙をインプットしたことはありません。

わかりやすく例えるなら、みなさんパソコンを使いますよね。デスクトップに何を保存していますか?必要なファイルを直接貼り付けている方もいるでしょうが、たとえばワードなどの文書ファイルを何十個も貼り付けている人はまずいませんよね。どの文書を保存したのか探すのに苦労しますし、画面表示できる数に限りもあります。たいていの人はファイルの種類や項目ごとに分類してフォルダを作ったり、ショートカットなどを作成するのではないでしょうか。

このフォルダの役割を果たすのが文法です。

単語集で脈絡のない単語をひたすら覚えるのはデスクトップにその都度ファイルを貼り付けるようなもので、記憶に限界がありますし必要な時に引き出すのに苦労します。

例えば中国語文法のなかに非常に便利な“補語”というのがあります。「吃」は‘食べる’の意味ですが、補語の用法を理解すれば「吃得上」‘食事にありつける’、「吃不上」‘食事にありつけない’、「吃得下」‘食べきれる’、「吃不下」‘食べきれない’、「吃得饱」‘食べてお腹いっぱいになる’、「吃不饱」‘お腹いっぱいにならない’、などまだまだいろんな表現ができます。「吃」1語を覚えるにしても今紹介しただけで語彙数は6倍になりますよね。脈絡なく覚えるよりはるかに効率が良いと思いませんか?実は文法は語彙力の効率的な強化に欠かせないのです。

基本的な会話集で初歩的な学習をしたあとは、一通りの文法を理解しましょう。その後「聞く」教材の学習を中心におこない聞きながら新しい単語を書き記し、「読む」「書く」「聞く」の語彙力を増やすことを心がけてください。

最初はわからない単語だらけで大変ですが、私はこのやり方がベストだと断言しておきます。

「話す」はどうするの?

ここまで読んでいただいた方には、紹介した学習方法がインプットばかりで「それで話せるようになるの?」と疑問を持つかもしれません。

安心してください。ここに紹介した方法は大人になってから新しい語学を学ぶ方にとって、すべて効率よく「話す」能力を身につけるための学習手順です。当然私自身高いレベルで話せるようになることを目標にしていましたし、単語や文法を覚えることで満足していたわけではありません。

何度も言いますが、「話す」はアウトプット(記憶の引き出しから引き出すこと)であり、インプットしたもの(作った記憶の引き出し)がなければ決して話すことはできません。

そして、慣れながらアウトプットとインプットを同時におこなうやり方は一見合理的に感じますが、脳の発達が著しい幼少期を除いては実は効率が悪いのです。

中国語を学習したことがない人でも「你好」と「谢谢」は知っていますよね。発音の正確さは別として、今いきなり中国人と出会っても迷いなくあいさつで言えると思います。少ない引き出しだけなら作るのも引き出すのも時間はかからず、「読む」「書く」「聞く」「話す」を同時におこなうほうがむしろ効果的です。しかしこれが300を超えたらどうでしょう?私が経験したようにすべての能力を同時に向上させることに限界を感じてくるはずです。

ゆえに最初の基本会話集を終えたら、しばらくは「読む」「書く」「聞く」の耳を慣らしながらインプットする作業に専念するのがベストです(もちろん発声してみることは必要です)。作った引き出しを引き出す「話す」は一定のインプットが済んでから意識しておこないます。私の場合仕事や交友関係のなかでアウトプットする機会がなかったので、学習を始めてから年に2~3回中国や台湾に2泊3日程度の1人旅をおこない、ここぞとばかりに「話す」訓練をしました。最初は会話といえるレベルではありませんでしたが、通じる発音と通じない発音が確認できることで「話す」語彙力も増え、反応のスピードも徐々に速くなっていきました。その後旅行で出会った人達とも微信でつながり日本での「話す」訓練にも事欠かなくなっていきました。

「話す」は引き出す訓練ですので、余計なインプットをせずアウトプットに集中するほうが断然効果的なのです。

ぜひともこれらのことをを意識しながら効率よい学習を進めていきましょう。

まとめ

  • 中国語学習を始めるなら”普通話”を選択し<基本的な会話集>からスタートする
  • 独学の場合ゼロから習得までにかかる時間の目安は、基本的な日常会話で1年、中国語検定準1級や通訳案内士では5年
  • 「読む」「書く」はインプットすること、「聞く」は耳を慣らすこと、「話す」はアウトプットすることでそれぞれ学習方法が異なる
  • 文法を理解したうえで「聞く」ことに重点を置きながら「読む」「書く」の語彙力を増やし、「話す」訓練に集中する

コメント

  1. […] ルで学ぶ方法は「話す」訓練として非常に魅力的なツールですが、以前の記事<【必読】中国語入門虎の巻>でも説明したとおり「読む」「書く」「聞く」の語彙の引き出しを一定以上 […]

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